静かに豊かに暮らす

 私の先輩の両親は市内から車で30分のところに山小屋風の建物を建てて、イタリアンレストランをしていました。シェフである御主人が丹精込めて作った料理を奥様が運んでという暮らしが35年続きました。3年前から、修行していた息子さんとお嫁さんが帰ってきたので、息子さん夫婦に店を譲って引退することになりました。

若いころから、修業に明け暮れ、店を開いてからは、長い休暇を取ることもできなかったので、夫婦で静かに豊かに暮らそうと、市内のマンションを売却して、息子さん夫婦の隣の敷地に離れのような形で住まいを建てることにしました。

 新しい住まいのイメージは、沖縄の平屋の住まいのように、座位の暮らしです。離れと言っても、完全に独立していますが、限られたスペースなので、住まいに対する考え方をよりシンプルにしました。リビングとダイニングと客間の機能を合わせた「居間」を中心に据え、小さなウォークインクロゼットとパントリーにそれぞれの収納を集めました。コンパクトながら、機能的なキッチンも備えました。ここで、お客様のためでなく、奥様のために、御主人が腕をふるうこともあります。奥様の大好きなロゼワインを開け、御主人の好きなジャズをかけて、人生で一番ゆったりと食事をします。レストランを開いても、お客様が入らなかった時もありました。友人達がテーブルを埋めてくれた日もありました。それでも、5年目くらいからは、常連客もつき、予約も断らなくてはならない日も出るようになりました。御主人が、大好きな仕事を思う存分できたのは、奥様の協力があってこそだと言います。これからは、時間が許す限り、この住まいで、奥様のために料理を作りたいと思っているそうです。静かに、豊かに暮らすのに、充分な空間ができました。

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This entry was posted on 土曜日, 7月 14th, 2012 at 3:32 PM and is filed under 家造り . You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. Both comments and pings are currently closed.